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ナッシー号の利用状況を調べてみた!

 (2023/05/26 更新)

 

多額の税金が投入されているナッシー号の利用状況を分析して実態を市民に報告する議員は皆無だ。能力がないのか、関心がないのか、市長に忖度しているのかは不明だ。

 

昨年末に2025年1月24日期限の「白井市 公共交通に関するアンケート」が無作為で2,350人の世帯主宛に郵送されている。今頃、集計が終わっている頃だろうか。

 

「コミュニティバスの利用促進について」というアンケート調査の設問7には「市では、高齢者等の交通弱者の移動手段の確保、交通空白地域の解消、公共施設の利用促進を目的にコミュニティバス(ナッシー号) 4台を運賃150円/回で運行しておりますが、運賃収入だけでは賄えず、令和5年度では約7千9百万円の財政負担(税金での負担)をしています。また、令和5年度の利用人数は78 , 147人でした。そこで、財政負担により、コミュニティバスが維持されていることを踏まえて、コミュニティバスの利用促進には何が必要だと思いますか(最大3つまで)」と書かれていた。

 

正直、令和5年度(2023年度、以降は西暦を使う)の利用者数に驚いている。2022年度の利用者数は減り続けて67,742人だったのだから1万人以上回復したことになる。にわかには信じがたい数字だ。2023年度の78,147人の内訳は不明だ。

 

市内でナッシー号を見かけてもいつもせいぜい1人か2人しか乗っていない。しかし、2022年度の1便当たりの平均利用者数が3.9人で2023年の1便当たりの平均利用者数は4.4人だから変化の感じられるような利用者数ではない。そしてよくよく考えてみれば2021年8月のルート改正で便数が40便から61便に50%以上増便されているのだから1日当たり利用者数が増えるのは当然のはずだが、増便後も2022年度まで利用者数が減り続けていたことを驚くべきだろう。コロナの規制が解除されて通常運転の社会生活に戻ったのにこの程度しか利用者が回復していないことを憂慮するべきなのだろう。

 

 

現実にコロナ前の水準まで利用者が回復せず、バス事業の労働規制と高齢化による運転者の減少で路線バスを減便する動きは加速している。

 

しかし、白井市のコミュニティバスについては別の大きな問題が存在している。それは、路線バス事業者への忖度でルート改正が過去2回行われたことだ。

 

1回目のルート改正前の2017年度の利用者数は40便で年間18万人だったのが、現在は4割程度の利用者しかいなくなってしまった。あの当時は、周りにときどきナッシー号を利用しているという人がいた。しかし、最近は周囲にナッシー号を利用しているという人は皆無だ。

 

ルート改正の目的は民間にできることは民間でという市の方針で新鎌ヶ谷駅の直通ルートが減便され、運賃の高い北総線の代わりに利用していた市民の足が遠のき、1回目のルート改正後の利用者数は12万人を割り込むほど減少してしまった。

 

そして20208月のルート改正で新鎌ヶ谷駅の直通ルートが廃止され、コロナの影響もあって2022年度の利用者数はとうとう7万人を切ってしまっていた。こういうのを普通、失政という。悪政というべきかもしれない。庶民の生活を蔑ろにするお代官様の意向に逆らえない家臣のような取り巻きばかりになってしまったようだ。無投票当選の弊害だろう。しかし、お代官様もお上の意向には逆らえないことだろう。

 

2回目のルート改正の大義名分を「高齢者等の交通弱者の移動手段の確保、交通空白地域の解消、公共施設の利用促進」と市は説明しているが、言い訳にしか聞こえない。目的は路線バス事業者への補助と北総線の利用者を増やしたい北総鉄道の親会社である京成への忖度があったことは間違いないと思う。あるいは北総線の運賃値下げへの見返りという側面もあるのかもしれない。

 

千葉ニュータウンの公共交通には北総線>路線バス>コミュニティバスという序列がある。北総線の利用者減につながる並行バスと新鎌ヶ谷駅に乗り入れるコミュニティバスは京成には自分たちのテリトリー侵害と映っていたのかもしれない。

 

コロナ禍でバスの利用者が減少しているときに便数を40便から61便に増やすという増便がなぜ必要なのか普通には説明がつかない。そこで考え出されたのが「民間にできることは民間で」というフレーズを置き換える「高齢者等の交通弱者の移動手段の確保、交通空白地域の解消、公共施設の利用促進」という市民への新たな説明だ。消費税の増税を延期したときの安倍元総理の「新たな判断」というウソを思い出す。

 

コミュニティバスの利用率が減少して委託費が増えても福祉のために行うルート改正だから問題ないという理屈だ。2回目のルート改正案には「現行の運行経費水準を極端に増大することなく、運行本数を増便する」と記載されていた。

 

しかも都心と逆方向でおまけに他市の千葉ニュータウン中央駅行きの大幅な増便だ。白井市民で時間のかかるバスで千葉ニュータウン中央に行く人は限られるだろう。大半の人はマイカーで行くはずだ。車を使わない人は運賃が高くても北総線を利用するだろう。

 

21便の増便のうち15便が千葉ニュータウン中央行きという不自然さだ。4ルート4台の運行体制に必要な運転手を最小人数で抑えるためのプランだったのではないだろうか。あるいは、事業者の採算から逆算して便数が決められた可能性もある。それとも北総線の千葉ニュータウン中央駅利用者を増やすのが目的だったのだろうか。

 

結局、市の掲げた大義名分はいずれも果たされていない。民間にできることは民間でという新鎌ヶ谷直通の並行バスは廃止され、並行バスに対抗するために運行が開始された京成の路線バスは現在、26便から2便(一往復)に減便して運行?されている。民間ではこの区間の路線を維持できなかったことが証明されてしまった。

 

そして、新鎌ヶ谷駅に乗り入れなくなったナッシー号に至っては福祉レベルのバスになってしまい、ルート改正前の1台当たりの利用率が65%から2割に満たない水準(2022年度の利用率は16%程度)まで落ち込んでしまっている。福祉目的だとしてもこういう時に普通なら行政は受益者負担を理由に運賃の値上げを提案するはずだ。しかし、値上げをすれば利用者が減り、委託費が増える悪循環に陥ることだろう。

 

運行事業者は利用者が減ろうが、増えようが関係ないから気楽だ。かつてナッシー号が新鎌ヶ谷駅まで運行していたときに白井市地域公共交通活性化協議会の席上で京成側の委員がナッシー号の運賃が路線バスに比べて安すぎると発言していたことを思い出した。だったら路線バスと同一運賃にしてみたらどうだろうか。競合するバスは存在しなくなったから値上げ自体は可能だ。鎌ヶ谷市や印西市のコミュニティバスはどうして100円の運賃で維持できているのだろうか。

 

新鎌ヶ谷駅の乗り入れを復活させない限り、どんな手を打ったとしても利用者が大きく増えることは想像しにくい。収支改善策が明白なのに矢継ぎ早に議員報酬、市長の報酬と職員の給与を引き上げたくらい財政に余裕があるから高齢者等の交通弱者の移動手段の確保、交通空白地域の解消という福祉政策?を優先したいのだろうか。

 

事業者の都合を優先して行われたルート改正は高齢者等の交通弱者の移動手段にもならないし、そもそも交通空白地帯という区分けの地域に住む人たちは公共交通を利用しないのではないだろうか。かつて、仕事で駅から遠い八街に住んでいる人に電車で目的地に向かう時刻表のコピーを渡したら電車に乗ったことがないので車で行きたいと言われたことがある。この地域の人にはバスよりタクシー券の配布や乗合タクシーの方がいいのではないだろうか。

 

公共施設の利用促進というが、市役所の玄関前の立派なバス停に停車しているナッシー号に乗っている人の姿を私は目撃したことがない。ルート改正後に利用者はむしろ減っているのではないだろうか。

 

バス事業者が路線バスの撤退を望み、減便に対して市役所へ住民から多くの問い合わせが来ている七次台地区や新鎌ヶ谷駅への直通の復活を強く要望している富士地区にコミュニティバスの資源を集中するべきだ。京成に忖度して北総線の利用を優先する市長の方針が変わらなければ状況は変わらないだろう。市長に忖度する議会も期待できない。最近は市長の市政運営を批判するような議員はほとんどいない。議員報酬を上げてもらって批判し辛いのだろうか。

 

歯に衣を着せずに言えば、現状のナッシー号は路線バス事業者に対する補助金としか思えない。もし、そうでないと主張するなら、コミュニティバスの委託を返上してほしい。利用者の少ない路線バスを福祉バスレベルと揶揄し、この状況が続けば人員を割けなくなるという発言は脅しのようにも聞こえる。もっと上がりの多い路線に資源を投下したらどうだろうか。福祉レベルの路線は人材の浪費だろう。利用者も運転手も肩身が狭いはずだ。

  

市も市民の生活を優先してくれる新たな事業者を探すべきだ。私は、京成が白井のバス事業から撤退しても何も困らないように思う。もう既に白井の公共バスは崩壊しているのでこれ以上悪くなることはないだろう。